迫る奥之太刀

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迫る奥之太刀

 突然、私の背中目掛けて飛んできたものがあった。おめおめやられる私ではない。謎の襲撃者には、私の身体をすり抜けたように見えたであろう。私の正面にいたみっくんは、慌てることなく、撃ち落とした。ボウガンの矢であった。  そのまま、みっくんは、私に向かって天狗の如く飛翔した。「奥之太刀」の「天狗抄」である。  絶妙のタイミングで背後の襲撃者が第二の攻撃を仕掛けようとするのを、私は振り返ることなく、観の眼でとらえた。  前門の天狗抄、後門のボウガンの矢だ。  とらえた刹那、私の身体は勝手に動いた。無形の位に構えていた木刀を振り返ることなく、背後の襲撃者に手裏剣の如く打つ。  その間に、私の脳天にみっくんの木刀が迫る。スローモーションに見えるのは、ゾーンに入ったってやつか。走馬灯は見えないから、安心だ。 『危ない、私。』  空中のみっくんには、私の左腰から白い光が神速で放たれ、木刀を両断しただけでなく、飛燕の如く軌道を変え、首筋を打つのが見えたであろう。当然、峰打ちだけど。 「お見事。」 みっくんは、静かに倒れた。念のため、首筋に手を当てると、脈拍も呼吸も安定している。死んでない。生きてる。  秘奥義、スゲエー。最高じゃん。 「危なかった。私、人殺しにはなりたくないもんね。今んとこは。」 私は顔面に木刀をくらい、痛みに苦しみ、恐怖に震える謎の襲撃者に、静かに近づくのであった。
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