謎の襲撃者の正体

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謎の襲撃者の正体

「やめろ、来るな。ワシは年寄りだぞ。年寄りをいじめるのか、貴様は。呪われろ。」 私の背中にボウガンを撃ち込んだのに、よく言うよ。私だから良いものの、当たったら、死ぬよ。私は、右手に握った白刃を素早く振るい、ベルトを斬った。  白い光の正体、白刃は、そう、左腰に差した杖の中身。仕込み杖である。  明治維新、廃藩置県で尾張藩が消えただけでなく、廃刀令が出されたので、尾張藩最後の藩主が御指南役であった私の父上の曾祖父に仕込み杖に作り替え、与えてくれたのであった。私の家門の家宝である。  備前國長船祐定( びぜんのくにおさふねすけさだ)。室町時代後期に打たれた刃長二尺二分(約61.2cm)の名刀。小板目に杢交り乱れ映り立ち、直刀に小沸つくのが、私のお気に入りだ。白刃を眺めていると、魂が引き込まれる。人を斬りたくなるから、ヤバい。  さて、ベルトを斬られ、恐怖マックスで小便を漏らした者は、あの初老の漁協組合長であった。  命惜しさにペラペラ喋ること、見苦しい。  海で遭難した息子の嫁、未亡人を実の娘のように可愛いがっていたが、風来坊のアイツに心を惹かれたのが、面白くなかった。はっきり言えば、男としての嫉妬である。  そのため、裏で天狗党と手を結び、アイツを痛めつけ、追い出そうとした。  アイツとみっくんの対決の時は、遠くから太陽の光りを鏡で反射してアイツの眼に当てた。私たち一門は暗闇でも夜目が効くが、それだけにキツい。眼の痛みで、一寸の隙ができたアイツは、みっくんに頭を打たれたとか。なるほど、納得だ。  濱田くんの様子がおかしいと思ったので、立場を悪用し、問い詰め、LINEで私を罠にはめたのである。卑怯極まりない。パワハラ、モラハラ上司。斬りたくなった。          
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