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父上の遺言
草木も眠る丑三つ刻、天狗党のメンバーは、百鬼夜行の如く奈良県に帰って行った。救急車は呼ばなかったが、優しい私はメンバーの傷の手当てをしてあげたのである。
念を押さなくても、二度と熊野灘にはやってこないだろうよ。
みっくんは、また今度、闘いたい、修行し直してリベンジしたいと言うので、喜んでLINEを交換した。良い修行仲間ができた。
今日の敵は、明日の友だね。
漁業組合長からは、精神的慰謝料と口止め料として一千万円くらいもらおうかなってと思ったが、アイツの入院費、治療代、その後の検診代に回すことを固く約束させた。念のため、スマホで録画しておいた。
漁業組合長は快く了承してくれましたとさ。めでたし、めでたし。
阿保か。これで、終わる訳にはいない。今は亡き父上の遺言を果たさなくてはならない。そう、三年前のあの晩に消えたアイツを探して、闘えと、仕込み杖を授けてくれた。
詳しいことは教えてくれなかったが、その後、私が進む道は自分で決めろと。
だから、何としても、アイツに会わなければならない。闘うしかない。
私は、うっすらと赤い熊野灘の水平線に再度誓うのであった。
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