兄弟子を探して熊野灘

情報収集大作戦

「はい、チーズ。」
　肩を寄せ合い、頬をくっつけて写真を撮る幸せそうなカップルがいた。ヘルメットでぶん殴りたくなったよ。
『そうやっていられるのも、今だけだぞ。』
　私は心の中で毒を吐き、獅子巌の前にある喫茶店、漢字が難しい店に入った。バイクにヘルメットをロックし、鍵を抜く。杖を絶対に忘れない。窓側の席に着き、一息つく。いや、腹が減っては、戦が出来んだ。
「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになられましたら、お声をおかけ下さい。」
いかにも人の良さそうな店員さんが、お水とおしぼりを置いてくれた。
「うまい。」
　何でもないお水が、うまい。これも、熊野の自然の恵みか。身体に染み渡る。
　メニューを見て、日替わりランチにしようか、軽くパスタにしようか、矢場とん好きなのでトンカツ定食にしようか悩んだが、後のことを考えて、一番高いエビフライ定食にした。もっとも、名古屋生まれ、名古屋育ちの私は、エビフライも大好きなんだな。
エビフライ定食を注文した。名古屋にはかなわないが、値段相応のうまさだった。私は、ペロリとたいらげる。
　さて、情報収集に取り掛かるとするか。