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嫌な予感
教えてもらった町中のホテルにチェックインするには少し早い時間だ。一刻も早く、アイツの手掛かりを探りたい。私は、バイクにヒラリとまたがる。
獅子巌から国道42号を北上するんだけど、バイクにして良かった。レンタサイクルなら、ヤバい。あの競輪漫画のメンバーなら、鼻歌で楽勝だろうな。目的地の磯崎町まで、結構、距離があるもんね。
途中、モスバーガーとイタリアンの看板を見つけたが、全力で誘惑を断ち切った。
トンネルを抜けると、教えてもらった海沿いのホテルが右手に見える。方針変更。背中のリュックサックだけでもホテルのフロントに預けるとするか。
5月の下旬で、このご時世なので、予約なしでも部屋がとれた。毎年8月17日に行われる花火大会があった年は、その前後は予約でうまるらしい。
フロントのお兄さんは、やたら、私に話しかける。気持ちはわかるよ。普通の男なら、当然の行為だ。
鬼ヶ城観光を勧めるが、塩対応でスルーする。遊びに来た訳ではない。私の一生、いや家族、一門の名誉と誇り、存亡がかかっている。部屋で一休みする暇も、ありえない。
私は、自販機でスポーツ飲料を一本、一気に飲み干して、バイクに颯爽とまたがる。
杖は皮袋に入れかえ、背中にかついだ。
水浴びでもしないかと誘う海水浴場を横目で眺めつつ、美味しそうなお食事処の看板をチラ見しながら、磯崎町までの道を急ぐ。
途中、ピーポーピーポーとサイレンを鳴らす救急車とすれ違うではないか。
嫌な予感がした。
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