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夜中にコンビニへ
「すみません。眠れなくて、ちょっとコンビニに出かけてきます。」
フロントののマネージャーらしき銀縁眼鏡の男に、しおらしく、鍵を預けた。
「お気をつけて、行ってらっしゃいませ。コンビニなら、ファミマとローソンがございますが、セブンイレブンはありません。」
親切に教えてくれたと言うより、以前、宿泊客に文句を言われたからかな。一瞬、セブンイレブンのシュークリームが食べたいと思ったが、消し去る。
時計の針は、夜の10時を過ぎていた。いよいよ、狂った天狗やらにご挨拶ができるかと思うと、胸がときめく。私は、風を切って、バイクを走らせた。
国道311号線から磯崎町に入る坂道の手前で、私はバイクを降りる。バス停にバイクを停める。ヘルメットは金属製で光を反射するため、外した。代わりに、長い自慢の黒髪を縛りながら、眼だけ空いた漆黒の黒頭巾をかぶる。これなら、お化粧を落とさなくてすむしね。ジャケットも脱ぐと、漆黒の道着姿になった。
そして、背中の皮袋から、杖を取り出して、帯にしっかりと差し込む。
左手のサポーターも確認し、思わず、笑ってしまった。誰かに見られたら、絶対に忍者のコスプレに間違えられる。全身黒い不審者として通報されるかも。
私は濱田くんが待つ場所まで足を進めたが、おかしい。いないでは、ないか。私の色仕掛け不足かと反省したが、すぐにLINEの着信音が鳴った。
「まことにすみません。急用ができ、行けなくなりました。狂天狗党は、町外れの黄色い倉庫の中で、酒盛りをしています。入り口のシャッターは半開きです。くれぐれも、お気をつけ下さい。では、おやすみなさい。」
内容を確認したが、何か怪しい。まあ、知りたい情報はゲットできたし、足手まといの心配をしなくてすむから、良しとするか。
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