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第三話
悶々としている俺。
あの後、それは何事もなかったかのように振る舞える訳もなく、お互いにどうもぎこちない感じで過ごした。
風呂に入るタイミングが重なって、それもお互い譲り合うし。キンキンに冷えた缶ビールだっていつもより2本多く飲み干してしまうし。
膝枕って別にそういう性的なやつでもないわけだろ?なんでこんなに初心なDTムーブになっているのか……。
ルールねぇ……。
常夜灯のオレンジに染まる天井を眺めながら考える。
ムラムラした時?それともただ疲れた時?
ある程度利害は一致しないとマズいよな。夫婦とはいえ結局は他人なわけだし。
あー考えれば考えるほど意味がわからねぇ俺の発言。
なんで膝枕なんて求めたんだろ。
「横でムームー唸っててうるさいんだけど何?」
ヨメはいつもと変わらない感じで話しかけてくる。
スッピンのヨメの横顔も可愛い。って今はそんなことどうでもいいわ。本題だろ俺。
「いや、さっきの膝枕の件」
「なんかそれだけだと高校生みたい」
「それはオレも思った。放課後の教室とかで膝枕してもらうとかめっちゃ青春じゃない?」
「変態性しか感じない妄想ね」
ジト目を向けてくるヨメ。
「でも制服なんて私じゃ着れないよ。歳も歳だし」
いや、ヨメが制服!?考えにもなかったが一応妄想してみよう……。
「……アリだと思う。割と真剣に」
「ふーん。あなた的にはアリなんだ」
「見たことないわけではないし、ただ今の俺がそれ相応にオジサンだからなぁ。お前は若いと思うけど」
「ほ、褒めないでよ。そんなあなたも制服が似合わないほど歳を重ねた様には思わないけど?」
「あ、ありがとな」
「こ、こちらこそ若いなんて言ってくれてありがとう」
「「……。」」
お互に誉め殺し合いをして更なるダメージを負う。
「明日もあるし、流石に寝ようか」
「そうね、おやすみなさい」
ヨメはそう言うと、こちらとは逆を向いてうずくまった。
俺はなんとも言えない雰囲気に押し負けそうになりながら、反比例するように逆側を向いてうずくまった。
「制服もアリか……」
ボソッとヨメが呟いた言葉は聞こえないフリをすることにした。
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