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第八話
翌朝。
テーブルの上には、タイトルだけが書かれた一枚のメモがあった。
《旦那のコスプレ候補》
あぁ、俺はコスプレして膝枕するのね。
そういえばあいつ元コスプレイヤーだもんな。いや、最近してないだけで興味が薄れた訳ではない?
……ってまた変なシチュエーションになるだろこれ。
なんとなく鉛筆で下書きした形跡あるし、どう見たって廃課金してるソシャゲの推しキャラの名前だし……
いつになるかわからんが、大学以来のコスプレを自宅ですることになるのかもしれん。
あぁ怖い。コスプレなんて家でするか?
……いやすまん。俺がヨメにさせてたわ。JKコス。
そう考えるとこの夫婦結構やばい気がする。
これまでちょっとずつではあるが距離が開いてレッツ離婚タイム!になってもおかしい感じだったけど、若い頃の思い出というか癖というかそういうのが溜まりに溜まって拗らせてしまったヤバい夫婦に進化してしまっている。
よかった。今日はヨメの方が会議のせいで出勤早くて。
多分弁当とメモ間違えたな。そんなことありえないと思うでしょ?これが実際あるんだわ。天然エピソード。
……コホン。
無駄話はいいんだよ。
時計を見ると、ボチボチ出社の準備を整えなければならない時間であった。
「行くかぁ」
誰もいないリビングに一人呟き、着替えを始めた。
私は、いつもより早く家を出た。
急いだからと言って、何かあるわけではない。
「私が執事の男装して、旦那が推しのコスをする……グヘェ」
ニヤケが止まらないシチュエーションですなこりゃ。
「普段は私が執事キャラ選択してプレイしてるけど、完全に寄せるのはちょっと違うかもなぁ」
妄想が捗りますなぁ。朝なのに。
旦那はこういうテンションだったのだろうか?
まぁそんなことは今は置いておいて。
「楽しみだなぁ。コス合わせで膝枕……」
いつもより空いている電車の中でニヤケが止まらない私であった。
しかし、出社してメモにまとめようとしたところで、早朝に書き残したメモをリビングに忘れた挙句、旦那の分の弁当箱まで持って来てしまったことに気がついた。
即謝罪のメッセージを旦那に送信して、顔が熱くなった始業前となってしまった。
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