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2人揃って同じ方向に走る。テロリスト達が気を取り直して追ってきた。
雨を凌げる所は?
焦るリオナ。
疎らに建物はあるが、みな屋根が壊れている。
ようやくテロリスト達も、赤茶けた雲が迫っていることに気づいたようだ。
「ひっ! 破滅の雨だっ!」
「逃げろっ!」
慌てふためいているが、遅すぎた。彼らの上から雲と同じ色の雨が降り注ぐ。
「うわぁぁっ!」
叫び逃げ惑う。しかし、雨の範囲は徐々に広がり彼らの行き場はなくなった。
「リオナ、あっちだっ!」
雨がすぐ後ろまで迫った頃、リョウが叫びリオナの腕を掴んだ。力強く引っ張る。
見ると小屋のような物があった。斜めに傾いでいるが、屋根は健在だ。鉄筋らしい。あれなら凌げる。
リオナは頷くと、リョウに続いて走る足を早めた。
風が強まり雲の移動速度が増す。雨音がザーッという激しいものになり、2人を呑み込もうとする。
小屋の扉に飛びつくリョウ。だが、鍵がかかっていて開かない。
雨の飛沫が感じられるほどになった。
「くそっ!」と舌打ちすると、リョウは扉に体をぶつけていく。リオナより二まわりは大柄で体格の良い彼の体当たりにより、扉は激しく開かれた。
室内へ飛び込む2人。リオナは壊れかかった扉を素早く閉める。
その瞬間、建物の屋根を雨が激しく打つ音が響く。
リョウがリオナの肩を抱いた。彼女は彼にしっかりとしがみつく。
窓があった。2人して歩み寄り、外を見る。
汚染物質を多量に含んで赤茶けた毒の雨を浴び、テロリスト達がバタバタと倒れ始めた。おそらく数分で死に絶えるだろう。
この小屋がなければ、あるいは、たどり着くのが遅れていたら、私達もああなっていた……。
目を伏せるリオナ。そんな彼女を、リョウが優しく抱きしめた。
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