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2 科学者アレン
10分くらい経っただろうか。赤茶けた雨はやんだ。
一息つくと、リオナはリョウから体を離す。彼は微笑みながら、彼女の頭を軽くなでた。
2人はヨコハマ・シティ・ポリスに所属する刑事だ。そして、仕事上の相棒というだけでなく、今、一緒に暮らしている。3ヶ月前にリョウから告白され、リオナはそれを受けたのだ。お互いを尊敬し合うとともに、深く愛し合ってもいた。
小屋から2人して出る。雲は去ったが、空はそれよりある程度薄いものの、やはり赤茶けている。この時代、青い空も海も見ることはできない。リオナが生まる前から、どちらも薄汚れた色だった。
大型のトレーラーが近づいてきた。2人の前で停まると、運転していた男が手を振り笑いかけてくる。
「助かったよ。さすが、強いねぇ、君達」
どこか楽しそうでもある。アレンという名のその若者は、天才的科学者として名が通っていた。男性としては小柄で、しかも童顔のために子供のようにさえ見えるが、リオナやリョウと同年代、二十代半ばくらいだろう。
乱れてボサボサの銀髪をかきながら降りてくると、2人をまぶしそうに見るアレン。
「逞しくて頼りがいのあるリョウ、美しいだけでなく強さもあわせ持つリオナ、2人とも強い正義感を持って終末の世界で任務を全うしようとしている。お似合いのカップルだよ」
えっ!?
アレンに言われ、目を見開いて驚くリオナとリョウ。2人の関係など、彼にはもちろん話していない。つい先日知り合ったばかりなのだ。
「ここまでの2人の会話、態度、仕草とかから、容易に想像がつくよ。僕の頭脳は科学的な分野だけだけじゃなくて、そういう洞察力も優れているんだよ?」
得意げにウインクすると、アレンは「さあ」と2人を促す。
肩を竦め苦笑しながら、リョウは運転席に乗り込んだ。リオナが助手席へと続く。
「ドライブの続きだ」
気軽そうに言いながら後ろの席に乗るアレンを見て、リオナは溜息をついた。
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