1 危機

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1 危機

 何年も前から人が住めなくなった集落の跡地――。  その地面を打つ雨音が、微かに聞こえ始めた。  まずいっ!  リオナ・ツキオカは息を呑む。空を見上げ、赤茶けた雲がそこまで迫っているのを確認した。彼女のセミロングの黒髪が、湿り気を帯びた風に揺れる。  少し離れた場所で瓦礫の陰に隠れている相棒、リョウ・シゲモリも気づいたようだ。息を呑んでいる。  目が合った。どちらともなく頷くと、素早く走り出す。  ボウガンの矢がいくつも放たれ、2人の体をかすめていく。  破滅思想を持つテロリスト達だった。おそらく10人以上いる。  「ちっ! うっとうしい奴らだ」  そう叫ぶと、リョウが腰のベルトを素早く抜き取り、鞭のように翻す。  彼を狙って飛んできた矢がたたき落とされた。  リオナは地面を転がって矢を避けると、立ち上がりざまジャケットから細身のナイフを3本とり出し放つ。  敵3人が胸に刺さったナイフに手をやりながら倒れた。  この時代、環境汚染やエネルギーの枯渇問題等があり、リオナ達のような警察官といえども銃は持てなくなっていた。それぞれが、自前の武器を用意している。  サバイバルナイフやチェーンを手に襲いかかってくるテロリスト達。  リオナはそれらをかいくぐると「やあっ!」とかけ声とともに飛び上がり、左の男に飛び後ろ回し蹴り。着地と同時に身を屈めながら回転し、右の男の膝を蹴り破壊する。  あっという間に、大柄な男2人を倒してのけた。  華奢で小柄、花のように可憐な女性であるリオナを甘く見ていたのだろう、離れた場所の敵達が唖然として見ている。  視線を巡らせると、リョウもベルトを鞭のように使い3人を次々倒していた。  「リョウ、急いでっ!」  叫ぶリオナ。雲がすぐそばまで来ていた。そこから『破滅の雨』が降りそそいでいる。
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