赤玉

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赤玉

 コンクリートとアスファルトで埋め尽くされた旧市街地の湾岸部では珍しく、アスファルトが剥がされ、露わになった土地が目視できるその敷地内には、どこから種が飛んできたのか、或いはコンクリートとアスファルトに覆われた周囲の地面の下をずっと這ってきたのか、様々な雑草があちこちに生い茂り、朝露が蒸発していくのと同時に、青い草いきれを漂わせている。  敷地の真ん中には、コンクリートの基礎の上に、小さな工場のような、廃れたトタン張りの建物が建っており、錆びだらけの上に落書きだらけで、今にも倒れて、朽ち果てようとしているみたいだった。  そこに青山航は、張り地の人工皮が裂けて破れ、中の草臥れたスポンジが覗いている安っぽいパイプ椅子を持ち出してきて座り、テーブル替わりのドラム缶を真ん中で半分に切った物をひっくり返した上で、干してよく乾いたタバコの葉を、オルファのカッター替刃で刻み、丁寧に巻紙で棒状に包んで、それを咥えると、かなり前に絶版になっている年期の入ったジッポライターで火を付けた。
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