妹への愛をこじらせろ

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 何時しか昼になり、低く重厚な鐘の音が鳴り響いた。その音で少女は目を見開き、渡された時計を見る。すると、時計の針は共に真上を指しており、少女はニコライの部屋に急いだ。  ニコライの部屋の前には、食事を運び込む大人の姿が在った。少女は、その無駄のない動きを眺めながら兄の部屋を覗く。しかし、そこに彼の姿はなく、少女は困惑した様子で立ち竦んだ。 「ごめんね。先に入っていて良いって言っておけば良かった」  声を聞いた少女が振り返ると、そこには部下を従えた兄の姿が在った。 「エル、君も昼食を摂れ。僕は暫く自室で食べる」  ニコライの部下は音もなく立ち去り、妹はその背中をぼんやりと眺めた。 「僕達もご飯を食べようか。ちゃんと、体に良い食材を使わせてある」  ニコライは、妹の背中を押して部屋に入らせた。室内には、出来立ての料理が並べられ、兄は少女に座るよう告げる。  食卓を囲んだ二人は、他愛ない話を始めた。兄からの質問には体調を気遣うものもあり、少女はそれに警戒しながらも答えた。  料理を全て食べ終えた時、ニコライは用意されていた茶をマグに注いだ。それは、彼が妹を連れ帰った際にも飲んだもので、独特の香りが部屋に広がった。
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