妹への愛をこじらせろ

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「我が一族の新たなる力に、乾杯」  ニコライは茶を飲み干し、満足そうな表情を浮かべた。妹は戸惑いながらも茶を飲み干し、マグを置いて一息つく。 「僕はそろそろ仕事に戻る。じゃあ、また明日」  そう言い残して兄は去り、部屋に残された妹は直ぐに書庫へ向かっていった。  ニコライが少女を連れ帰ってから数日後の昼食時、彼は問い掛ける。 「家庭教師とネットを介した授業、勉強するならどっちが優良かな?」  少女は食べるのを止めて考え、自らの考えを整理した。 「家庭教師なら、質疑応答も出来て教師側も生徒の進捗をはかりやすい。ただ、教師と生徒の相性が悪い場合、及び、教師の程度が低い場合においてはデメリットが多くなる」  淀みなく話す妹に兄は笑みを浮かべ、そのまま可愛らしい声を聞き続ける。 「ネットを介せば、離れた場所に居る複数の生徒を指導することが出来る。だが、生徒が増えることもあって、教師からの一方通行になることが多くなる。生徒の側からすれば画面越しの授業は気楽だが、生徒の力を伸ばしたいなら相性が良い家庭教師だろう」  ニコライは軽やかに手を叩き、少女は驚いた様子を見せる。 「まさか、ここまではっきり答えを返してくれるとはね。書庫の鍵をプレゼントした甲斐があったよ。一体、どんな書物を読んだら、その年で直ぐに答えを出せるんだい?」  にこやかに笑うニコライに見つめられながら、少女は読んだ本を回想する。 「自然科学の分野と哲学の分野……だったと思います」  ニコライは顎に手を当て、片目を瞑った。
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