妹への愛をこじらせろ

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「成程、僕がカテゴリーだけは覚えて戻せと言ったから」  ニコライは濃いめに淹れられた茶を飲み、目を伏せる。 「自然科学の分野は、ダーウィンの著作やファーブル著作の昆虫記全巻、哺乳動物の図鑑の何冊かです」 「待って、この数日で昆虫記全巻? ちゃんと、食べて寝ているよね?」  ニコライは微笑むのを止め、真顔で妹を見つめた。 「はい、面白かったので並んでいる本は一気に読みました。食事は昼以外も残さず頂いてます。眠くなったら寝ます」 「まさか、眠くなったら書庫で寝ていないよね?」  ニコライは珍しく慌てた様子を見せ、苦笑した。 「それはないです。書庫は書庫、知識を得る為の場所ですから。それに、部屋のベッドの方がしっかり休めます」  その答えにニコライは安堵し、ソファの背もたれに体重を預けた。彼は、細く息を吐くと茶を飲み干し、立ち上がって少女を見下ろした。 「通信環境を整えて、優秀な教師を雇う。それまでは、好きなだけ書庫を利用してくれ。これからも食事と睡眠は必ずとること」  妹はその指示を受け入れ、ニコライは小さく息を吐いた。 「僕は仕事に戻る。後は好きにしてくれ」  そう告げるなりニコライは退室する。一方、少女は彼の後に部屋を出、真っ直ぐに書庫へ向かって行った。  数日後、少女用の勉強部屋が用意された。その部屋は書庫に近い小部屋で、大きなスクリーンが壁にかけられていた。
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