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「もし、これが違法行為なら、受付を通る際に止められる」
若者がそう言った時、少女は警戒しながらも車椅子に座った。その後、少女は車椅子に乗ったまま移動し、今度は前後に長い車へ乗る様伝えられた。
少女は、躊躇いながらも車に乗り、その隣に若者が座った。幾らかして車は走り出し、若者は少女に書類を渡しながら口を開く。
「僕達の間には血縁関係がある。どんな関係かまでは定かじゃないが、年齢から鑑みて、暫定的に兄妹としておこう」
少女は渡された書類に目線を落とし、若者は話を続けた。
「僕の力をもってすれば、君は症状に合った治療を受けられる」
若者は、長く息を吐き出した。
「うちの血筋は、先祖が異形と交わったらしくてね。闇に紛れて行う仕事には能力を発揮する反面、太陽光には弱い」
少女は首を傾げ、若者は小さく笑ってみせる。
「先祖がどうあれ、受け継がれてきた遺伝子はそう言うものだ。能力があるからこそ稼げる。十分に稼げるからこそ、高価な車を買い、運転手を雇うことも可能となる」
若者は手を伸ばして少女の顎を掴み、半ば強引に目線を合わせた。
「だからこそ、その遺伝子を持ちながら才能を開花させないのは勿体ない。持って生まれた才能が何か、それは何か……開花するまでは定かじゃないが、兄として投資だけはしてやろう」
若者は少女から手を離したが、少女が目線を逸らすことはしなかった。
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