理由はどうあれシスコン的な

3/6
前へ
/14ページ
次へ
「才能を開花させるまで、僕が君に投資する。あくまでも投資だ。慈悲や義務感、そう言ったものを僕は持ち合わせていない」  若者は暗色の瓶を取り出して蓋を開け、金属製のカップに飲み物を注いだ。彼は、瓶の蓋を閉めぬまま、飲料入りのカップを少女に手渡す。 「遺伝的な欠陥。全てが欠陥とは言わないが、その遺伝子が発現した結果、生活が不便になる症状。それは、同様の遺伝子を持ち合わせた血筋なら、知識を持ち合わせている。病院の対処療法と違って、代々その体で試し、試行錯誤した末の知識だ。試す価値があるとは思わないかい?」  若者は、開けたままだった瓶に口を付け、その中身を飲み干した。 「例えば、特定の薬草や食材。東洋医学を主軸に、西洋の医学知識も加えて作った煎じ薬。味は保証しないが、日中に活動したいなら、これが実に役立つ」  若者は舌を突き出し、少女に与えた飲み物を指差した。 「飲んでごらん。病院の治療では引かなかった赤みや腫れが引く。痛みがあるなら、それすら消えていく」  少女は、渡されたカップを握りしめ、注がれた液体を眺めた。その液体は、暗い車内では茶色と緑色の中間色に見える。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加