理由はどうあれシスコン的な

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 少女は、院内着を脱ぎ捨てると小さく畳み、床の隅に置いてから浴室に入った。その後、彼女は若者の指示通りに湯に浸かり、体が温まりきったタイミングで浴室を出た。  少女の肌は上気していたが、病院を出る際に腫れていた肌は綺麗になっていた。しかし、少女がそれに気付くことはなく、用意された服を身につけていった。  服を着終えた時、少女は服の下に置かれていた地図を手に取った。その地図は、屋敷の一部が描かれた見取り図で、彼女の居る場所から赤いペンで矢印が書き入れられている。  少女は、その矢印に沿って屋敷を歩いた。そして、ある部屋の前で立ち止まり、ドアの前で室内に呼びかける。 「お疲れ様。ドアを開けて入っておいで」  若者に言われるまま、少女は部屋に入った。その部屋は広いながら掃除が行き届き、その中程に若者は居た。  若者はソファーに座り、その前にはテーブルが置かれていた。また、テーブル上にはティーセットが置かれており、バターの香る菓子が幾つも用意されている。  若者の対面にも、テーブルを挟んでソファーが在り、そこにはふわふわとした新しいカバーが掛けられている。若者は、少女に対面のソファーへ座るよう伝えた。少女は、戸惑いながらもカバーの上に座り、若者は二人分のカップに茶を注ぐ。 「遠慮する必要はない。好きなものを食べて、くつろいでくれ」  若者は、そう伝えるとカップに口を付けた。少女と言えば、若者に倣って茶を口にし、その味が気にいったのか一気に飲み干した。
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