理由はどうあれシスコン的な

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「紅茶も、好きなだけ飲めば良い。温まるまで入浴すれば、誰だって喉が渇くからね」  若者は、少女のカップに茶を注ぎ、自身は焼き菓子を摘まんで口に放り込んだ。 「新しい服の着心地はどうだい? 余計な染料を使っていないから、肌への負担は軽い筈だ」  問われた少女は服を見下ろし、口を開いた。 「気持ち良いです。病院で着ていたものよりずっと」 「それは良かった。当面の着替えも同じ素材で用意したから、肌に合わなければ別注しないとだからね」  若者は茶を飲み干し、空のカップを自ら満たした。 「肌が荒れている時は、なるべく刺激を与えない方が良い。合わない薬だけでなく、肌に触れる全てが刺激となる」  若者は、話しながらも焼き菓子を口へ運び、少女に好きなものを好きな様に食べるよう促した。少女と言えば、手前に置かれた菓子を摘まみ食べ始めた。彼女は、一口食べるなり目を輝かせ、若者はそれを眺めて口角を上げる。 「どの軽食も、君の為に用意させたものだ。遠慮する理由など、どこにもありはしない」  戸惑いながらも、少女は青年に促されるまま様々な菓子を食していった。腹を満たした少女と言えば、慣れない環境での疲労も手伝いソファーの上で船を漕ぎ始めた。彼女の様子を見た若者は立ち上がり、少女の背後に回って腰を折った。 「部屋は用意してある。今日はもう、部屋で休むと良い」  その提案に少女は頷き、若者は背中を伸ばして顎に手を当てた。
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