妹への愛をこじらせろ

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妹への愛をこじらせろ

 夜が開け、朝食が済んだ頃、少女はニコライの部屋にやってきた。訪問者の少女にニコライは微笑み、優しい声で呼び掛ける。 「おはよう、オヴィーリエ。紅茶を用意させたから、座って飲みながら話そうか」  それを聞いた少女は、ドアに近いソファに腰を下ろした。その眼前には豪奢なティーセットが置かれ、対面に座ったニコライはカップに紅茶を注ぎ始める。  兄は、温かな紅茶を妹に差し出し、自ら飲むための紅茶も注いだ。 「さ、冷めないうちに。熱いのが駄目なら、次からは冷たいミルクも用意させる」  それを聞いた少女はカップに口を付け、紅茶を飲んだ。途端に少女の表情は緩み、それを見たニコライの顔もほころぶ。 「さて、昨日は突然のことばかりで驚いただろう。だけど、ここでの生活に馴れるまでは慣れないことが続くだろう」  ニコライは紅茶を飲み、目を細める。 「だから、最初は君の行動を制限したい。僕達の体質からして、そもそも日中に外出するもんじゃないけどね」  ニコライは軽く笑い、妹は紅茶カップをテーブルに置く。すると、ニコライは直ぐに妹のカップを紅茶で満たした。 「君の部屋には、生活に必要な物は用意させた。本来なら、直ぐにでも就学手続きをするべきだろうが、こちらが手間取っていてね。代わりに、書庫の鍵をあげよう」  ニコライは、上着のポケットから鍵を取り出して妹の目線の高さに上げた。そうしてから鍵を机上に置き、紅茶を飲み干す。
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