妹への愛をこじらせろ

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「それと、持ち運べる時計。軽量化してチェーンを付けたから、首からかけて常に持ち歩くと良い。チェーンに書庫の鍵を通せば、管理も容易だ」  ニコライは、自ら言った通りに鍵をチェーンに通した。彼はチェーンを持ったまま立ち上がると妹の背後に立つ。そうしてから、ニコライは優しい手付きで妹の着る服の襟を立て、時計と鍵が通されたチェーンを左右に伸ばした。 「そのまま、動かないでね」  そう耳元で告げると、兄は妹の胸元までチェーンを下ろし、首の後ろで留め金をはめた。彼は、妹の着る服の襟を綺麗に整えると、先程まで座っていた位置まで戻る。 「歩くときに気になるなら、服の中にしまっておくと良い」  ニコライは自らのカップに紅茶を注いで一口飲む。 「それと、食事はちゃんと摂ること。書庫に長居するのは構わないけど、昼だけで構わないから、食事の時間にはここくるとこと。その為の時計でもあるから」  妹は首から下げた時計を手に取り、それから肯定の返事をした。 「じゃあ、一緒に書庫に向かおうか」  兄は音もなく立ち上がり、それに妹が続いた。青年は素早く部屋の出入り口に向かうとドアを開け、目配せで少女へ退室を促した。  部屋を出た二人は廊下を歩いていた。ニコライは簡単に屋敷の説明をしつつ先導し、妹は兄を追った。  書庫の前に来た時、ニコライはその鍵穴を指先で指し示した。彼は、そうしてから妹に渡した鍵を指し示す。その鍵を少女が回すと難なくドアは解錠された。
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