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5話
◉計算女王
シオリは計算機のような女だった。一流大学大学院まで行ったが時給の高いアルバイト先の雀荘で「本走入れればもっと時給上がるよ」と言われて麻雀を覚え「プロになればさらに時給上がるし今なら社員旅行で沖縄も行けるよ」と言われたのでプロ試験を受けた。結果は首席合格。大学院は2年で辞めてプロ麻雀プレイヤーとしての道を進む。
シオリは瞬く間に頭角を表した。時給目当てでしかないのでプロリーグは最低限の女流リーグしか参加しなかったが参加して初のリーグ戦ですんなりBリーグ首位。そのまま難なくAリーグに昇級して初のAリーグで女王位決定戦に残り準優勝。その後最低限参加しなければならない女流大会に仕方なく出ては優勝。翌年に連覇。その年は女王位にも輝くことになる。
容姿も整っており実力は最高ランク。そんなシオリが話題にならないわけがなかった。
こうしてシオリは時給目当てで仕方なしに始めた仕事で大成功をしたわけだがシオリの本気を引き出す相手はまだいなかった。
(…何も特別なことはしてない。数理に従って選択するだけのゲームの何がそんなに楽しいのかしら)とすら思っていた。事実、数理に従うだけでシオリは勝ち進んでいた。それはシオリには物足りなかった。
もっと夢中になれる強者との戦いをシオリは心のどこかで求めていたが、本人はそこに気付いていない。今はまだ貯金を増やすことにしか興味はなかった。
情熱とはかけ離れた所にいて「今日のゴハン何?辛いのは嫌よ」と「もう早く帰りたい」がシオリの口癖であった。
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