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「ストップ!」
その一喝で、私は演技を止めた。
不安を抱えながら先生の前に立つと、先生は大きな眼でギョロリと私を睨んだ。
「あなたは誰ですか?」
心臓がキリキリと音を立てる。
「赤羽さくらです……」
ビクビクしながら、自分の役名を答えると、先生は手元の資料に視線を落とした。
「あなたが考えてるさくらちゃんは、いったいどういう人物ですか?」
私は悩みながらも、自分なりの考えを伝えた。
「明るくて、活発的で……スター性もあって、笑顔が可愛いくて……」
「そうだよね」
一層低い声が響く。
私は何も言えなくなってしまった。
「最初からやろうか?」
「は、はいっ!」
先生は具体的な指示を出さず、何回も何回もやらせて、問題点に気付かせるスタイルを取っている。まだ何も掴めていない私にとって、それは終わりのない拷問にも思えたが、無名の私が表舞台に立つためには努力をするしかない。
すべては一人前の役者になるため。
私は闘志を燃やした。
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