うしろの舞妓さん

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 その日、わたしはちょっと怒っていた。 
 雑貨屋さんで見た可愛い化粧水を買ってとママに言ったのに、買ってもらえなかったからだ。  前言ってたみたいに、そんなものを使うのはまだ早すぎるって言うんだろう。  でも、まんが雑誌のふろくにもリップがついてたりするのに、そんなの古いと思う。 

 ああ、みんなは可愛い化粧水のビンとかいっぱい持ってるのに。  なんでわたしだけ。  そんなことを思いながら、わたしは、ずんずん歩いていた。  怒りにまかせて、歩いていたので、ふだんは通らない場所まで来てしまっている。  田んぼの側のまっすぐな道だ。  風に青々とした稲が揺れている。  気持ちの良いその場所を歩いていると、少し心も穏やかになってきた。  長くまっすぐな道の中ほどまで来たとき、大きな祠入ったお地蔵さまが見えた。  この辺ではもう珍しくなった田んぼの前に立っているお地蔵さまだ。  なんだろう、このお地蔵さま。  顔が白いな。  おしろい地蔵って書いてある。
  わたしはちょっと身をのり出し、横にある古い木の立て看板を読んでみた。

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