ハナコちゃんのスニーカー

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「お前が一生懸命祈ってるから言えなくてな。  ヘチマが上手く育ちますようにとか。  ハナコさんに会えますようにとか。  講演会上手く行きますようにとか。  ……いや、どのみち、『綺麗になれる』は、ほぼ、関係なかったな」  別に言ってもよかったな、という芹沢くんのやさしさに笑ってしまう。 「そういえば、いろいろ祈ったねー。  っていうか、芹沢くん、結構いろいろ、わたしが祈ってるの聞いてるね」 と言うと、芹沢くんは、一瞬、黙ったあとで、 「なんだかんだで、お前が俺をここに引きずってきてるからだろう」 と低い声で言った。  わたしはお地蔵さまに向き直り、手を合わせる。 「いつまでも、みんなで仲良く、元気にすごせますように。  ハナコちゃんにもまた会えますように」 「……やっぱり、関係ないこと祈ってるな」 と言う芹沢くんに笑い、わたしは言った。   「最初はなに地蔵さまでも。  人が祈ることで、変わっていく気がするよ。  お地蔵さまがみんなを助けてくれていることには変わりない気がするから」  そう言いながら、あのときの芹沢くんのように、祠の後ろを覗いてみる。  なにも書いてはないと知りながらも。
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