100km婆、暴走族撲滅に寄与。感謝状に困惑。

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 神奈川県警は暴走族撲滅に寄与したとして、主に神奈川県に出没する100km婆さん(住所不定、怪異)へ神奈川県警本部庁舎で感謝状授与式を行った。  人間以外に感謝状が授与されるのは今回が初となる。  100km婆さんは高度経済成長期頃から日本全国で目撃情報が寄せられるようになり、主に100km以上で走行する車・バイク等に併走することでドライバーの恐怖心を煽る活動を地道に続けていた。  神奈川県では近年、若者の集団暴走運転が問題視されており、取り締まりの強化を行っていたが、ある年を境に急激に件数が減少。原因の調査を開始したところ「100km以上で走行すると見知らぬ老婆が横を走っている。怖い」という証言が相次ぎ、100km婆さんの存在を知るところとなった。  実際に100km婆さんに併走されたという若者(23)は「横を見たら物凄い形相の婆がどこまでも付いてきた。スピードを上げても上げても逃げられず怖かった。絶対に人間ではないと思った。時々、夢に見る。もう絶対にスピード違反はしない。今は法定速度を遵守することを心がけている」と語る。100km婆さんについては怪異であることから、スマートフォン機器のカメラに姿が映ることが無く、SNSへの写真・動画付き投稿が不可能なことから、若者の抑止力としてより効果的だったのではないかと一部の専門家は分析している。  神奈川県ではスピード違反が他県に比べ著しく低く、これも100km婆さんの活動の影響ではないかと見られている。県警内ではスピード違反による交通事故の多い他県に、100km婆さんが出没して貰えないか打診を行っているという。  感謝状を受け取った100km婆さんは非常に困惑した面持ちで、「速い車やバイクがあったから追いかけただけ。それ以上のことはしていない」と告げた。最初は緊張の面持ちだった100km婆さんだが、式の最後に「100km以上走る車があると追いかけてしまうのは自分の本能だ。しかし、近年スピードを出す車が非常に減少しており、アイデンティティの崩壊を感じていた。感謝状を貰ったことで元気が出た。最近は煽り運転というものが人間界で流行していると聞いたので、そちらに働きかけをしていけたらと思っている」と今後の活動について明るい展望を述べた。  今後の100km婆さんの活躍に期待が寄せられる。
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