龍に九似あり

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龍に九似あり

時間を追うごとに輝きの増すその宝珠を、康隆とお滝は首を傾げながら見つめる。夕食はとうに済ませており、本来ならお滝はそろそろ寝る時間ではあるのだが、そうも言ってられなくなったのだ。何せそれは今となっては燭台の灯りをも凌ぐ程なのである。 「でね、ヌシはんも知らんって。やからお(もう)さまならご存知やと思って、それで持ってきたんよ」 唸る風と共に、夜色を刹那の光明が駆逐したかと思うと、轟音と共に屋敷が揺れる。お滝も康隆も思わず耳を両手で塞いだ。康隆もお滝も雷が怖いわけではないのだが、近くに落ちる轟音の喧しさは、何度経験しても慣れないものである。 しかもこれが最初ではない。恐らくは両手の指でぎりぎり数えられるか、数えられないかくらいは屋敷の池あたりに落ちているのだ。 「お(もう)さま、何やその宝珠、雷落ちる(たんび)に明るくなってまへん? あ、何や宝珠の中におる!」 お滝がついと宝珠を手で示す。康隆もその動きにつられて文机の上の宝珠を見ると、確かにお滝の言ったとおりに、それは碧色の光明を放っていた。彼女の言う、何かは既に見えなくなっていたが、先程見たものは幻覚でないと確信が持てた。 「……お滝、何か見えたんか?」 「ええ、何か小さい針みたいなんが……針いうか……あっまた見えた!」 二人が見守る中、宝珠の中心に出現した針のようなそれは、出現したと思えば即座にその姿を隠してしまう。二人がますます訳が分からなくなったところで、轟音が屋敷を震わせた。 どうやら今度は屋敷と池の間に雷槌が落ちてきたらしい。先程のものよりも強く屋敷を揺さぶり、それを受けて宝珠がさらに煌めきを増す。暴風も雨も、一段とその強さを誇り、お滝は屋敷が飛んでいかないかと、落ち着かない気分を味わうことになったが、妙に近くで誰かの声が聞こえ、そちらに注意を向けると、文字通り飛び上がりそうになった。 「見つけた」 そこには(みどり)直垂(ひたたれ)を着た人物が、音もなく立っていたのだった。
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