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澄んだ色をした、ほんのりと碧色のそれは、蹴鞠用の毬とほぼ同じ大きさか、それよりも大きいだろう。驚くことに、それはいささか発光しているようにも思える。その美しさから、玉と呼ぶよりは、宝珠と呼んだ方が正しいかもしれない。ひんやりとした感触を伝えてくるそれは、康隆の体温に染まることはなかった。
(これは宝珠なんやろか? いや、こんな大きい宝珠なんざ、庭の池に沈んでるもんやろか? いくらなんでもこんな大きいなら目立ちそうなもんやけど……そもそも何で庭の池にあらしゃった? いつの間にやら紛れたにしては変やなあ……そもそもどこから来はったんや?)
「はて?」
康隆は物思いを止めて目をぱちくりさせる。寸刻だけだが、その玉に何かがよぎったような気がしたからだ。持ち上げて見て矯めつ眇めつしても、何も起こらない。
(気の所為やろか……水晶やと思うたのに、何や薄っすら光ってあらしゃるし、不思議な宝珠やなあ……)
康隆はしばしその宝珠を弄っていたが、やはりその宝珠によぎる物など全く見当たらない。やはり目の錯覚だったのだろうか。
(気の所為にしては……寸刻やったが何か見えたんや。そもそも光る宝珠なんざ、今まで見たことあらしまへん……これはただの宝珠やない。でもそうやとしたら一体何なんや……?)
再び物思いに耽る康隆だったが、やがて頭を振ってしまった。
(そういえば……お滝は庭の池の鯉はんが拾ってくれたとか何とか言っとったな……その辺も詳しく聞かんと……)
時たまお滝は不思議なことを言うことがある。だが康隆はそれを奇妙とは思ったことは一度もない。何なら自分も、天に昇る声が聞こえる身である。それはお滝も同じであるのだが、それは雨の予兆だと言い聞かせてはいるにも関わらず、大抵お滝はあの声を聞いたら外に出てしまうのだ。連れ戻すと四肢をめちゃくちゃにして暴れるわ、自身もずぶ濡れになるわで、あまり良いことはない。濡れるのがあまり苦でないのは、お滝には内緒にしてある。そうでないと雨の中で遊びをせがまれそうだからだ。
康隆は丁重に宝珠を運び、転がらないように桐箱の蓋の上に宝珠を置き、おむらがお滝を連れてくるのを、ざああという雨音を聞きながら、しばし待つことにした。
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