高校1年生は……

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高校1年生は……

『高校編』 【高校1年】 俺の通う高校は一応進学校で、卒業生の90%以上は大学が専門学校に進学する。 ただ、進学先がちょろくて、1学年250名もいるのに、浪人生も合わせて、国立帝都9大学、二橋や帝工大などに行けるのは、多い年で10名程度、私立のトップ2+1相当校にも同じく20名程度で、上位校と言われる大学に40名程度、医学部は2,3人だし、将来目指している目的のための専門学校に行く人もいるけど、そういう、何か自分の意思を持ってる人は若干程度で、それ以外のほとんどが、普通の大学や専修学校というレベル。  だから『一応進学校』と皆は言っている(妹からも言われている)。 自分はというと、高校受験で失敗したのも影響があって、帝都大学などの国立はどう考えても共通テストの勉強に2次の広範囲な勉強は耐えられるかな~とヘタレな考えがあって、そう思うと、リベンジを図って私立2トップ+1校を目指す。 そのためには、2年になったらすぐに受験勉強をはじめよう、だから1年の時に思いっきり遊ぶぞ!と思っていた。 1年の最初に少しでも多くの友達を作ろうと……しかし、その考えは甘く、入学早々1週間もしないうちにクラスではカーストなるものができつつあり、当然俺は…そのトップグループには含まれていない。 陽キャと呼ばれる、トップカーストの連中は、他の生徒とはどこか何かが違う。 何が違うのか最初わからなかったから、知らないうちに彼ら、彼女らはいつの間にか仲良くなって、朝HRが始まる前やお昼、学校帰りにいつもつるんでいた。 こっちは1人でも多く友達を作ろうと、何か機会があるたびに話しかけてRINEのID交換をしたり学校帰りに駅前のバクドナルドに寄ったりして友達作りに頑張っていたのに、彼らはそういう気配もなく、いつのまにかトップカーストが出来上がっている。 俺は3週間の努力もむなしく、仲良くなりそうになっても部活がある、とか、中学で一緒だからとか、普段は挨拶や雑談程度の仲にとどまり、結局、帰宅部どうしで仲良くなったのは数人だけ。 共通のアニメの話題で話すようになった、ただ、彼らは本物のアニオタで、俺はしょせんアニメ好きのレベル、クラスでは話相手になってくれるけど、同じアニオタ同士が集まると、俺は参加できない、というか会話に入って行けない。 まあそれでもクラスにいる時はよく話すけど……友達が少ない。 実は、後に親友と言える友達は、今はクラスが違うけれど、1年の時、同じクラスだった。 最初、そいつの存在は普通に挨拶する程度に知っていたけれど、夏休み明け、急に髪型や服装が見るからに危ない恰好に変わり、髪の色が変わっては生活指導の先生に引っぱられ次の日、坊主頭になって登校して、数か月たったらまた違った髪型になって、また生活指導の先生に・・・・・・の繰り返しが続いて、そのうち昼休みや放課後になると、違うクラスの同じような恰好の連中がそいつを呼びに来て、一緒にどこかに行ったりして午後の授業は欠席だったり、ときどき顔が絆創膏だらけだったり、あきらかに人が変わっていた。 見るからに危ない奴だったから、クラスの誰も話しかけないし、そいつもクラスに溶け込まず1人でいた(こいつが俺の将来の親友になるとは、思ってもみなかった。) 俺はというと、最初に知り合った友達と話をしたり、隣の席になった女子と話をする程度で何も変わらず毎日を過ごしていた。 でも、俺には中学の時からの彼女がいる、休みの日やGWは彼女とデートして、相変わらずイチャイチャしてるし、心も体も寂しいとは感じていない。 そうこうしている内に定期試験があって、彼女に「しばらく会えないね、試験が終わったらまた会おう」と言って、試験勉強にはいった。 その期間はRINEや電話で連絡を取っていたが、試験期間に入る頃、電話が留守電に、RINEの既読が次の日だったり遅れがちになっていた。 彼女も試験勉強が大変なんだろう、とその時は気にしていなかったけれど、試験が終わって、彼女に連絡しようとしたが、変わらず、留守電のままRINEの既読も遅れがち、なんとか連絡がついたら、大学の推薦を有利にするため、部活を始めたので、それが結構忙しいから、なかなか連絡できないと言ってきたので、付属の推薦って、1年からそんな事があるの?知らない事なので「がんばって」と伝え、会える時間ができたら会おう、と言ってその場は終わった。  【高校1年-最悪の夏休み】 いよいよ夏休み、夏休みは彼女とたくさん会える。いっぱいデートできる。 だけど、彼女は大学の推薦のための部活に忙しいと言って、夏休みにはいってもなかなか会う事ができなかった。 だから、俺の夏休みは ただただ暇、宿題もそれほど多くなく、バイトするでもなく、誕生日は11月だからまだバイクの免許もダメ、本当に何もする事がない。 クラスのグループRINEで何かイベントがないか毎日眺めているけど・・・何もない。 唯一話をする友達の菅井にRINEを送っても、そいつは本物のアニメおたくなので、そっち関係の友達とアニメ巡り?で、俺はアニメは好きだけどおたくほどではないから、そっちの連中と一緒にいても話についていけず・・・つまらない、結局 菅井とは夏休みには1度しか会わなかった。 でも学校では、1度隣の席になった女子とは、席が離れても普通に話すし、部活連中も教室以外でも、街で会ったらそのままバクドによって普通に話をするから、違うと思うけど・・・だからと言って、女子に夏休みに遊ぼうと誘うほどの関係もないし勇気もない、 部活連中は、夏休みも部活で、遊ぶもの同じ部活仲間が多いし・・・。 母親は俺が高校にはいってからパートをはじめたので昼間はいないし、1歳下の妹は超有名中高一貫の進学校の女子校で、高校受験があるわけでもないのに、毎日学校で夏季講習、何もすることがない俺は家で1人ぼっち。 ネットでアニメや映画を見ても、そんなのは最初の1週間ほどで飽きてくるし、暇暇暇――ってばかみたいに叫んでも、なんかむなしいだけ。 彼女がやっと時間があるからと言ってきたのでデートの約束をして、そういえば夏のそれらしい服がないからと思ってショッピングモールに行って服を見ていたら・・・彼女が見た事もない男の人と・・・ 男性と2人で、明らかに年上の大学生くらいの感じで、彼女もうっすら化粧をして、見たこともないような女子大生みたいな恰好で、それは俺が知ってる彼女ではなく、いつもより大人びた雰囲気、最初は親戚のお兄さん?と思って声をかけようと後ろから近付いたら……よく見たら、手は恋人繋ぎ、2人にニコニコしながら話をしてるし、時々彼女は男性の肩に頭をつけたり・・・ 俺は声をかけようと思っていたからかなり近づいてしまって、あわてて気づかれないように距離をとろうとした時、2人の話声が聞こえてしまった。 「来週、2人で旅行に行かない? 泊りがけで」 「うん、うれしい、孝さんと2人で旅行ね」 それ以上の会話は耳に入らなかった‥‥‥そういう事だったんだ。 部活が忙しいんじゃなくて、彼とのデートが忙しかったんだ。 そのまま何も買わず家に帰って、何もできず‥‥‥。 次の日、約束の時間に約束の場所に行くと、いつもの彼女が既に待っていた。 化粧もしていないし大人びた服装でもない、いつも見る彼女、昨日見た彼女とは違う・・・ どことなくぎこちない2人、・・・きっと今日振られる‥‥‥  どこでも良いから、という気分で、待ち合わせ場所から見えるカフェ、「そこに入ろうか」  「うん」 2人ともほとんど何もしゃべらないで、一番奥の席に座った。 振られるのがわかっているので、コーヒーだけを頼み、彼女も紅茶だけ頼む。 少しでも早くこの場を去りたい、そんな思いの中、店員さんが向こうに行ったので、 俺から話かけ 「久しぶり、2ヶ月?くらい?」 「うん、そうだね」 「今日は何か話があるんでしょ?」俺から振られるのを誘導している。 「うん」 彼女がなかなか話さない、どうしようか、俺が昨日見た彼の話をした方が良いのか、 でも一応は付き合ってた彼女だから、俺が浮気を発見して問い詰めるよりは、ちゃんと彼女の口から言わせてあげよう、そう思って、こっちもじーっとして 「克己君、あのね、別れてほしいの」 「うん」 「えっ?」 「いいよ」頭の中は怒りまくってるけど、せいいっぱい見栄をはって落ち着いたふりをして答える。 「聞かないの?」 「ああ、どうせ、他に好きな人ができた。とか、そんなんでしょ」 「・・・うん」 「夏休みはその人とデートしたり、旅行したりしてるんでしょ」 「・・・うん」 「話はそれだけ?」 「ごめんなさい」 「別に」 「でも・・・ごめんなさい」 「ほんと、別にいいよ」 「克己君、私の事好きじゃなかったの?」 「えっ、どうして?」 「だって、そんなに簡単に「「いいよ」」って」 「だって他に好きな人ができて、2人でデートしたり旅行に行ったりしてるんでしょ、それを俺が何言おうと、何も変わらないから、あまり無駄な事したくないし」 「ごめんなさい」 「じゃあ、話はこれで終わり?」 「うん」 「じゃあ、あっ、そうだ、1つ教えて? 彼氏は大学生?どこの大学?」 「・・・うん・・・二本澤大学の1年生」 「ふ~ん、そう、お幸せに、じゃあ」  そう言ってコーヒー代として500円玉を置いて1人で出て行く、なんとか彼女に顔を見られないように背中を向け出口へ、結構やばい、泣きそうな顔をしているのは自分でもわかる。 500円玉をテーブルに置いた時、彼女はちょっとびっくりしたけど、すぐにうつむいて申し訳なさそうな雰囲気をしていたが、泣いてはいなかった。 そりゃそうだ、昨日は彼氏と楽しいデートで来週は旅行、一番ネックだった俺がすんなり別れてくれたんだから泣くことはない、うれしいんだろ、くっそ、ふざけやがって…… すっごくくやしい、思いっきり責めて泣かせてやりたかったけど‥‥‥俺が先に泣きそうだったから、見栄を張って、ものわかりが良い振りして‥‥‥なるべく早く彼女の前から消えたかった。 カフェを出てかなり急ぎ足で家に向かう、途中から走り出す、ぎりぎり間に合った。 家に帰って自分のベッドにうつ伏せに……涙が一機にあふれ出した。 2時間くらいたった頃、落ち着いてきたので、ふと顔をあげ、何気なく回りを見ると、普通に変わらない自分の部屋があって、普通に自分がそこにいて、それだけなんだ…… 俺は振られても、周りは変わらない・・・父さんも母さんも妹も昨日と同じ何も変わらない・・・俺が振られただけ・・・そう思うと・・・俺のこの出来事って、小さい事なのかな~。 そう言えば、俺、本当に彼女の事が好きだったんだろうか、なんて考えたりして、振られたショック、彼女が他の男と楽しそうにしている現場を目撃した時のショックをごまかしながら、1人ブツブツとへりくつをこねる。 ぜったいあいつより良い大学に行ってやる、そしてすっごい美人の彼女を作って見返すんだ、とか。 彼女にふられる前に、別の男といるのを見かけたからショックが大きかったのかな?とか、俺が好きになって告白してつきあってたら、こんなもんじゃないよな~とか。 単に自分に言い訳しているだけなんだけど、冷静に考えれば、大好きだった彼女に振られ、それも彼女には新しい彼氏がいて旅行に行くほど深い関係だ、という事。  2人が付き合うこととなったいきさつとかを聞きたい気持ちもあったけど、聞いてもどうしようもないし、だって、定期試験の直前までは頻繁に彼と会っていたし…… 試験期間からなのか、いつから2股なのか、なんてもうどうでもよかった。 だって、もうあの男とそういう関係にまでなってるんだから、今更俺の元に戻っても・・・イヤだな。 次の日から、もう何もする気が起きなかった、けどかえってよかったかも、だってただ暇な夏休みなんだから。 結局なにもしないで、ただ1日中だらだらと、ネット配信アニメや映画も観るけれど、スマホゲームもするけれど、さんてんどうのゲームはなぜか体力づくりが大半で、おいでよ植物園はいやされるけどそんな気分じゃないし、やる気なし、ただただスポーティで音楽垂れ流してるだけ。 気がつけば彼女の事ばかり考えて寂しくなって、むなしくなって、……そんな最悪な夏休みだった。 実は、中学卒業の時、連絡をもらった女子から、電話がきたけど、振られてショックで、って話したら、会わない?  バクドで会って、話をして、慰めてもらったけど、それっきり……は~、 何も起こらなかった。 ようやく夏休みが終わる。 幸いにも、元カノは違う高校、元カノの高校の方が都心なので、駅は同じでも乗る電車の時間帯が全然違う、俺は部活もないから帰りが早い、まず会う事はない。 高校の友達には、彼女はいる事は知られていない、知っているのは、同じ中学出身者と、席が隣になっていろいろ話して親しくなった女子くらい。 振られたことについて、聞かれたら話すけれど・・・聞かれなければ・・・だから普段は同じ態度でいれば振られたことは気づかれない、なんてしょうもない、ほんとちっちゃいな、俺。 【なにもない高校生活】 夏休みが終わり、学校に行くと、皆、最初の話題は夏休みに何をしたか、そんな話で盛り上がっていたが、1週間もしないうちにそれも落ち着き普通の生活に戻る。 隣が席になって親しくなった女子=佐々木さんが、今隣にいる女子=山本さんの所に雑談をしに来ていたので、何気なく2人に「夏休みは何してた?」と聞いたら、山本さんが 「別に、何もなかったよ、普通、女子の五人と一緒にプールに行ったのと、ショッピングモールに買い物したり、カラオケ行ったりしたぐらいで、あとは普通に家にいた」 佐々木さんが「高谷君は?」 「俺、何もなかった。ほとんど家にいた」 すかさず佐々木さんが 「あれ?高谷君、彼女いなかったっけ?」 「うん、ふられた」 「あっ、ごめんなさい」 「いいよ」 「やっぱり、そうか~」 「えっ?」 「あのね、高谷君の彼女と会ったことあるんだけど、高谷君の彼女って結構派手だよね」 「・・・うん」 「○○大学付属女子高校でしょ」 「うん」 「私の友達が同じとこに行っててね、実は、高谷君の彼女の友達なの」 「そうなんだ」 「GWがあけたころ、大学生と合コンあるから来ない、って誘われてね、大学生と合コンなんて大人のすることだと思っていたら、私の学校だと普通だよって言われてびっくりしちゃって、で何度も誘われるから1度行ってみたの、そこで高谷君の彼女に会ったの」 「高校名を言ったら、彼氏と同じ高校だって言うから、名前聞いたら高谷君だったの、聞いてなかった?」 「うん」 「彼女、すごい大人びてるわよね」 おそらく化粧をして、そういう服装だったのだろう、あの彼氏といた時のような。 「彼氏がいるのに、こんなところに来ていいの?って聞いたら、断ってたんだけどしつこく誘われるから1度だけ、ってことで来たんだって、まあそんな感じでね~ 」 「ああ・・・・・・そっか~」 なんとなくわかった、そういうことか、どうしたら大学生の彼氏なんかが とは思ったけど、そういう合コンか・・・・・・。 「やっぱり、卒業して違う高校に行くと難しいわよね」 「‥‥‥」 「ごめんごめん、でも早いうちにそうなって良かったと思うよ、あの学校って皆派手で、ほとんど大学生の彼氏持ちばっかだから、早いうちに・・・・・・言い過ぎた、ごめん」 「いいよ、そうだよね、そう思うよ」 「やっぱり大学生?」 「うん、そう聞いた」 中野さんが詳しく聞きたいかのように聞き出してきたので、それに気が付いた山本さんが気をきかせて、話題を変えてくれる、 「そんな事だったらRINEで皆誘えばよかったのに、暇な人は来たと思うよ」 「そうなんだ、何か皆で遊ぶのかなってグループRINE見てたけど。何もなかったから」 「皆同じよ、私たちも、仲良くなった5人と1,2回会って遊んだくらいで、結構暇だったもの、グループRINEで誘われたら、用事がなければ行ったと思うよ」 佐々木さんが「じゃあ 高谷君を誘ってあげればよかったね~」 「ほんと、遊んであげればよかったね~」と2人。 俺の夏休みは彼女に振られ、それもみじめな振られかたをした最悪の夏休み。 こんなことだったら佐々木さんや山本さんにRINEで一緒に遊んでもらえば良かった。 ちょっと上から目線が気になったけど・・・・・・。 佐々木さんも1度席が隣になった事があり、それから親しくなった女子。 2人とも、クラスではかわいい方で、他のクラスの男子に交際を申し込まれたことがあり、どうやって断ったら良いか相談されたことがある。 1年の時は、最悪の夏休みが終わって、秋になっても何もおこらず、クリスマスも正月も家族と過ごして、結局最初の予定では1年は遊んで2年から受験勉強を開始する予定が大きく崩れてしまった。 学校の帰りも何もなく、まっすぐに家に帰る。 中学の卒業の時に、一緒に遊ぼうと言ってくれた女子も1度バクドで話たくらいで、たまにRINEが来るけど、クリスマスの頃にはほとんどRINEもしなくなっていたし、 時々、佐々木さんと山本さんから、彼女のいない高谷君につきあってあげると言って、帰りにファミレスに行き、3人で雑談をする程度。 俺は何もかもうまくいかず何もない高校最初の1年が終わり、春休みにバイクの免許を取得するため、教習場に通って、バイクの免許を取った。
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