深緑の眼は惹かれる①

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「本当にごめんなさい、入学式に遅れそうで急いでいて」 「いや、大丈夫。気にしないで」  眼鏡を受け取った彼はさっと眼鏡をかけて少しうつむきながらそう言った。そして少し不思議そうにしたこう話した。 「入学式をする体育館はこっちじゃなくて反対の道をまっすぐ行ったところだよ」 「え、あ、そうだったの!?ありがとう!」  最悪、反対方向だったなんて。とにかくすぐ向かわないと!私は体育館まで走り出した。  無事入学式に間に合って何事もなく終わり、クラスメイト達や担任の先生と顔を合わせた。クラスメイトの中には入学式前に会った彼もいた。  彼の名前は西野淳というらしい。なんだか自己紹介のときもちょっと暗くて口数が少なくてミステリアスというか、ちょっと近寄りがたい雰囲気の人だ。  実際今なんとなくグループとまではいかなくても、なんとなくまとまりのようなものができてきているのに、彼はそこに加わらず一人で本を読んでいる。 「早川さーん、一緒にかえらない?」 「奈緒、3人で帰ろう」  私は今日仲良くなった子たちに呼ばれて彼から目を離した。まあ私があんまり気にしても嫌がられるかもしれないし、しばらくは様子見ておこう。  私は「早川奈緒」と書かれた教科書などをカバンに詰め込み、彼女たちと駅までおしゃべりしながら帰っていった。
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