きっと永遠

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きっと永遠

「エド? どうしたんだ?」  ハッとした。気付くと俺は、キッチンで紅茶を淹れるお前を後ろから抱きしめていた。プラチナの髪が降りかかる首筋から、シャンプーの香りがふわりと香る。 「あ、いや……何でもねぇ」  言ってしまってから、強い焦燥感が口をついた。 「……いや。愛してる。ジーク」  お前はティーカップに目を落としたまま、くすぐったそうにクスクス笑う。 「本当に、どうしたんだ? そんなこと急に言われたら、浮気を疑っちゃうな」 「俺には、お前だけだ」  項に口付けて、耳へと上がっていく。耳たぶを吸うと、感度の良いお前は肩をすくめた。 「んっ……待って、エド。三分だけだぞ。紅茶が、出来るまで」  砂時計をひっくり返し、お前が腕の中でこちらを向く。俺は下からすくい上げるように、首を傾けて唇を奪う。触れて、吸い、誘うように舌でつついてから、擦り付ける。くぐもった呻きが鼻に抜けて、俺は熱を上げた。 「アッ?」  細いお前を抱き上げて、キッチンの調理台に座らせる。性急にベルトを外し露出させると、薄い茂みの中にある器官を口に含んだ。 「ちょっ……エド、やだ、っこんなところ……」  身をよじるが、抵抗のために俺の髪を掴んだ指からは、だんだんと力が抜けていく。口内の器官は硬くなり、俺はその先端を舐め回した。 「あ・あ、駄目、エド」  そこがお前のイイところだなんて、十年前から知っている。俺も昂ぶってはいたが、まずはお前をイかせたいと思った。羞恥に掠れ、時々高く裏返る喘ぎが、密やかに部屋に充満する。 「エドッ……、あ・イく……ンん――っ……!」  押し殺した嬌声が上がったあと、固く目を瞑り肩を上下させる。やがて、うっすらと開いた黄緑の瞳が、ひどく色っぽくて好きだった。お前は俺を、濡れた瞳で睨む。全く迫力はないのだが。 「エドの、馬鹿」 「ああ。俺は馬鹿だ。お前にイカれてる」 「もうっ、そう言えば俺が許すと思って……!」  俺は桜色に染まったお前の目尻を、親指の腹で撫でて、笑う。 「許してくれないのか?」 「んん……もう」  お前が俺を許さなかったことなんか、ない。お前の衣服を整え、調理台から下ろすまでの間くらう小言を、可愛いと思った。お前は、初めて会ったときからそうだったな。後輩なのに、遅刻の多い俺を叱って。俺のためを思っているのだと知りながら、口うるさく俺のあとをついて回るお前をずっと可愛いと思っていた。そう言ったら、お前はまた可愛らしく怒るのだろうけど。 「あ」 「あぁ?」 「紅茶。飲む?」 「ああ。ひと仕事終えたら、喉が渇いたな」  お前は怒った顔を作ろうとして失敗し、噴き出した。蒸らし過ぎて少し渋くなった紅茶をふたりで飲み、それからお前は少し眠ると横になった。ベッドでうつらうつらとまどろむお前のプラチナの髪を、ゆっくりと撫で付ける。口内には、ストレートで飲んだ紅茶の渋み。それだけだった。  お前は、眠ったようだ。撫でていた髪の感触が、ふと薄くなる。この世界に未練を残したお前がたびたび現われるようになったのは嬉しかったが、キスしても、口淫しても、お前の『味』がしなくなったのは、俺をひどく寂しくさせた。一緒に横になって抱きしめると、輪郭が曖昧になったお前に、指先がもぐり込む。  ――ジーク。逢いたい。逢いたい。  こんなに近くに居るはずなのに。その想いが消えることは、きっと永遠にないのだろう。 End.
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