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しばらくしてから私はバーを出て、また外をゆっくりと歩いた。 「雨はやんだかな」 「そうね。雨音が聞こえないから。気持ちの良い風が吹いてるわ」 「これからどこ行くの? 」 「ビルの屋上なんていいわね。雨もやんだし」 「ああ。もっと気持ちいい風を浴びられるかも」 「そうかも」 私はそのまま近くにあった高層ビルの中に入り、エレベーターに乗って屋上まで昇っていった。 エレベーター自体は屋上の1つ前の階で終点だったが、そこからは歩いて、小さな階段を昇って屋上まで辿り着いた。 屋上に入る扉には鍵がかかっていたが、ピッキングの道具を持ってきていたので、難なく鍵を開けることが出来た。 「そんなのどうしたの? 」 「ネットで買ったのよ。本当に使えるかどうかわからなかったけど、ちゃんと使えたから不良品じゃなかった」 「へえ…」 私は心地良い風が吹き荒ぶ屋上のフロアを歩き回った。 ここからは直に都会の夜が四方八方に見渡せる。 これが見たかった。 「ここからだと本当に夜景が綺麗だわ」 「まぁね。ガラス板1枚も挟んでいないから。直だからね」 「こんな光景が見たかったのよ。私が生きてきた場所の光景」 「やっぱりいい風が吹いてるね」 「そうね。こんな風を浴びられて本当に嬉しいわ。ここまで来た甲斐があった」 「そうだね」 「最後まで付き合ってくれてありがとう」 「最後って? 」 「最後は最後よ」 「え?」 「これでおしまい…」
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