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「どういうこと? 」
「だからこれが最後。ねえ、あなたとはまた会えるとかそういう事はないかしら? 」
「それは生きてなきゃもう会えないよ。でも何で? 」
「もう一人ぼっちに疲れたのよ…」
「僕がいるじゃないか」
「そうね。でもあなたは私が見ている妄想にすぎない。何処にもいないのよ…。だけど、あなたと出会えてよかったわ。土曜日の夜はいつも私の相手をしてくれた。ひょっとしてこの世からいなくなっても、あなたにはまた会えるかなと思ったけど、そううまい話はないわよね…」
「どうしても、これが最後?」
「ええ、どうしても…」
私は屋上の手すりのところまで一人ぼっちで歩いて行った。
美しい彼の声はもう聞こえなかった…。
「さよなら…」
私は誰に言うでもなく、そう呟いてから、すぐに手すりを跨いで、自らの身体を宙空に投げだした。
これでお別れ…
何もかもから…
これでいい…
遺書を残す事もない。
私がこの世に存在したことになど、何一つ意味など無いから…
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