5

1/1
前へ
/6ページ
次へ

5

「どういうこと? 」 「だからこれが最後。ねえ、あなたとはまた会えるとかそういう事はないかしら? 」 「それは生きてなきゃもう会えないよ。でも何で? 」  「もう一人ぼっちに疲れたのよ…」 「僕がいるじゃないか」 「そうね。でもあなたは私が見ている妄想にすぎない。何処にもいないのよ…。だけど、あなたと出会えてよかったわ。土曜日の夜はいつも私の相手をしてくれた。ひょっとしてこの世からいなくなっても、あなたにはまた会えるかなと思ったけど、そううまい話はないわよね…」 「どうしても、これが最後?」 「ええ、どうしても…」 私は屋上の手すりのところまで一人ぼっちで歩いて行った。 美しい彼の声はもう聞こえなかった…。 「さよなら…」 私は誰に言うでもなく、そう呟いてから、すぐに手すりを跨いで、自らの身体を宙空に投げだした。 これでお別れ… 何もかもから… これでいい… 遺書を残す事もない。 私がこの世に存在したことになど、何一つ意味など無いから…
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加