イベント参加をご一緒に

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 2人は、リビングのソファーに横並びに座っていた。両者ソファーの上に両膝を立て、膝の上にスマートフォンを乗せて操作する。  詠眞の身長に合わせて身を屈めていた冴久が、さすがに体勢がキツイから座りたいと言ったのだ。それならば座ってやろうとの事で今に至る。  タイムリミットギリギリまで粘り、普段よりも1つ高いレベルまでクリアすることができた。 「わぁ! 今日15までいきましたよ! やっぱりこのやり方の方が効率いいですね!」  興奮気味の詠眞。普段見せることのない活気に満ちた笑顔に、冴久は思わずふっと微笑んだ。 「子供みたいだな」  柔らかく笑う冴久の顔に、詠眞はすっと眉を上に上げ、目を丸くさせた。冴久の笑顔を初めて見たような気がしたのだ。  わっ……課長、笑えるのか。ずっと仏頂面だから、全然笑わない人なのかと思ってたけど……。  そんなふうに考えながら、詠眞は子供みたいだと笑われたことを思い出し、「……課長だって真剣にやってたじゃないですか」と照れ隠しに言い返した。 「スピード勝負だからな」  真面目な顔でそう言う冴久に、今度は詠眞の方が笑いそうになった。ゲームにすら真面目に取り組むのだから、根っからの真面目人間なのだと確信した。 「明日のイベントもスピード勝負ですね」 「ああ。ただ、明日はギルドの対決があるからそっちからだな」 「マッチング見ました! 強い人いっぱい!」 「いや、総戦力ならうちの方が上だ。いつも通り、大きな拠点4箇所は俺達4人で取れるから、個人ポイントが上限に達したら攻めに入る」  明日のイベント画面に飛び、敵対するギルドのメンバーを表示させながら冴久は言う。俺達4人とはビジュ、うさ子♪、温野菜博士、ベルガモットの戦力上位4名のことである。  美形の真剣な眼差しは、相手のギルマスへと向かっていた。  またしてもペカーッと神々しく発光する冴久に、詠眞は眩しそうに目を細めた。  た、頼もしい……。私の倍以上の戦力があるメンバーばかりなのに、この余裕の表情……! ビジュさん……カッコよすぎないか!?  課長は苦手だけど……今でももちろん苦手だけど。……ビジュさんは、推せる。  詠眞はキラリと目を光らせた。隣にいるのは間違いなく上司のはずなのだが、普段の容姿と異なることもあって別の誰かと入れ替わったかのような不思議な感覚に捕らわれた。  更にそれが憧れのビジュとなれば、食いつかないわけがない。  二次元のような三次元のような、リアルでありながらどこか異世界だったビジュさんが……具現化された……!  詠眞の思考は完全に破壊された。
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