幸福搾取

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「そうだね」  私は間違いなく友樹を愛していたし、お腹の子を愛している。それでいい気がしてきた。 「香澄はこれからどうするの? やっぱ、実家に戻る?」 「そのつもり。あぁー。親に何て言おう? 離婚するかもしれない的な匂わせも一切してなくて、離婚しました。だもんなー。しかも、妊婦で」  離婚の次は親への説明。困難去ってまた困難な状況に頭を抱えるしかない。 「そっかー。そしたらまた暫く会えないね」  奈子が少し寂しそうな顔を見せた。 「そんなことないよ。落ち着いたら子どもの顔見せに行くし」  奈子に会えなくなるのは、私だって寂しい。また疎遠になってしまうのは絶対に嫌だ。 「子連れの移動は大変だろうから、こっちから行くよ」  奈子はそう言ってくれたが、 「こっちからも行く」  私は、会いたい時に待つ派ではなく、会いに行きたい派。それに、
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