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「そんなに信用ないなら、先に香澄が判押した書類を奈子が預かってればいいだろ。奈子が学校に持って来てくれれば、学校で押印する。で、鍵付きロッカーにでも大事に大事にしまっておけよ。それで満足だろ?」
嫌味を言う奈子を馬鹿にするように友樹が言い返すが、馬鹿なことをしているのは最初から最後まで友樹ただ一人であることを、お義父さんでもお義母さんでもいい、どちらかが彼に教えてあげて欲しいと思っていたら、
「じゃあ、そうしよう。友樹さぁ、香澄と離婚したら即刻弁当女と結婚した方がいいよ」
そんな友樹の背中を押すようなことを奈子が言うから、驚き、裏切られた気分になった。
「弁当女が恋に盲目なうちに仕留めないと逃げられるわよ。弁当女が冷静になって『アレ? 何で私、慰謝料と養育費でスッカラカンの男と付き合ってるんだろう』って我に返った瞬間に捨てられるから。まぁ、結婚した後に冷静なって絶望する弁当女を、友樹が目の当たりにする未来は避けられないと思うけど。人はずっと熱いままではいないからね。時間が経つと必ず冷静になる時がやってきてしまいますからねー」
しかし、奈子は私を裏切ってはいなかった。友樹にこれから先の地獄を親切に教えているだけだった。
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