幸福搾取

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「何で? 奈子だって相手からも取れって言ってたじゃん」 「あれはただの脅し。だって、友樹の家で話したこと、全部作り話だし。証拠なんか何もないもん」 「……え? どこからどこまでが? 全部って、丸々全部?」  脳内がハテナマークでいっぱいなる。今まで友樹を信用出来ないと思っていたが、奈子のことまで信じられなくなってしまいそうだ。 「友樹が学校で白い目を向けられているのは本当。友樹が昼休みに弁当女の学校の近くのコインパーキングに車を停めてるのも事実。その先からが私の予想。わざわざ友樹や弁当女の後をつける時間なんか、私にも弁当女の同僚にもあるわけない。アイツらに時間裂けるほど暇じゃないし、アイツらに時間使いたくもないからね。見事、予想的中してたみたいだねー」 「…………まじか」  あの修羅場で平然と嘘を言ってのけた奈子を、信じられないを超えて、奈子は嘘を事実に変える魔力を持っているのではないか? とちょっとした恐怖を覚えた。
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