幸福搾取

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「弁当女への恨みは充分に理解出来るけど、これ以上ことを荒立てるのは得策じゃない。ボロが出たら香澄が損をするかもしれない。そのための一括支払い要求なんだから。ボロが出る前にお金を頂き、ゴチャゴチャ言われる前にスッパリ縁を切ってサヨウナラよ」  まるで詐欺師のような奈子の口ぶり。確かに嘘は吐いたが、悪いのは誰が見ても友樹なのに、奈子が騙して金を巻き上げたように見えてしまうから不思議だ。 「…………スッパリ縁を切って……かぁ」  結婚式で誓った永遠の愛とは何だったのだろうか。友樹を無理矢理押し倒して作ったこの子は、愛の結晶と呼んではいけないのだろうか。お腹を撫でながら申し訳なさが込み上げる。 「友樹はどうしようもないヤツだけど、その子との縁を作ってくれたことだけはグッジョブだったよね」  私の様子に気付いた奈子が、私の肩を抱いた。
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