幸福搾取

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「弟の知能は小1程度だから、はたしてそこまで考えているかどうか……。それに、そういう施設って数が少ないんだよ。定員オーバーになったら値段の高いところに入れるしかない。だから今無駄遣いせずに必死に貯めてる」 「……そっか」  昨日今日ちょっと調べただけの私の情報など、奈子の役に立つわけもなかった。 「……だけど」  奈子が言いにくそうに接続詞を口にした。 「うん?」 「そんな弟がいながら、なんで私が実家を出て一人暮らしをしているか分かる? 実家にいた方がお金貯められるのに」 「……親が生きているうちは自由に暮らしたいからとか?」  奈子のクイズに在り来たりな答えしか出てこない。多分……というか、絶対に不正解だ。こんな単純な答えではないだろう。
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