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『友樹には今日、「残業しないで、寄り道もしないで一目散に家に帰れ」って言っておくから。香純、それまでひとりで大丈夫?』
「……大丈夫」
本当は大丈夫じゃない。でも耐えるしかない。私の両親は新幹線で2時間の距離に住んでいるし、義両親の家はそんなに遠くではないけれど、こんな時に気を遣っていられない。
『そろそろ営業が帰ってきそうだから、電話繋ぎっぱなしにしておくわけにはいかないけど、メッセージなら返せるから。何かあったらメッセージ送って』
私の「大丈夫」が大丈夫でないことを感じ取ったであろう奈子が、優しい言葉を掛けてくれる。
「ありがとう。ごめんね、仕事中に。私、どうしたらいいか分からなくなっちゃって、つい奈子に電話しちゃって……」
『なんくるないさー』
陽気で大らかと言われている沖縄人の言葉を使い、私の迷惑行為を明るく笑い飛ばしてくれる気遣い上手の奈子は、沖縄とは縁もゆかりもない。
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