NIPT

5/51
前へ
/186ページ
次へ
 電話を切り、自宅へ戻る。  検診後にスーパーに寄って夕食の材料を買って帰るつもりでいたが、そんな気力はどこにもなく、私の方こそ一目散に帰宅した。  家に入るやいなや、リビングのソファに横になり、お腹を摩りながら「何で、何で」と落涙。  そうしている間に日が暮れ、 「……夕食作らなきゃ」  手の甲やら手のひらやらて涙を拭き取り、むくりと無理矢理身体を起こし、キッチンへ向かう。  冷蔵庫の扉を開き、大きなため息を吐く。 「……何を作ればいいのよ」  買い物をせずに帰ってきたのだから、冷蔵庫の中身が貧相なのは至極当然だ。しかし、仮に潤沢に食材が詰まっていたとしても、今の私にたいしたものは作れないだろう。「この材料で何を作ろうか?」なんて考えられるコンディションではない。  結局、冷蔵庫の中の食材を適当に放り込んだカレーと、野菜を適当に切っただけのサラダと、玉ねぎをコンソメで煮ただけのスープを、本当に何も考えずに作った。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

144人が本棚に入れています
本棚に追加