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「ただいまー」
19:00。友樹が家に帰ってきた。
「いい匂いー。今日はカレーかー。お腹減ったー。何か奈子に『今日は早く帰って香純の話を聞け』っていわれたんだけど、何かあったの?」
スーツ姿の友樹がジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めながらダイニングテーブルにやって来た。
「……食べてから話すよ」
お皿にご飯とカレーをよそって友樹の前に置くと、向かいに腰を掛けた。
「……そう? じゃあ、いただきまーす」
私の陰気臭さに友樹は一瞬首を傾げたが、空腹が我慢ならなかったのか、勢いよくスプーンを口に運んだ。
「うんま‼」
美味しく食べてもらえるのは嬉しいが、市販のルウを使った、独自のアレンジ一切なしの料理を喜んでいる友樹の姿に、何も知らないって幸せだな。と、羨ましいのか呆れなのか分からない感情が込み上げてくる。
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