13人が本棚に入れています
本棚に追加
俺がこの住宅機器メーカーで働き始めて16年になる。傍から見るとすでにベテランで、自分でも大抵のことは経験してきたつもりだ。
課長の菅は1年後輩で入社してきた。仕事に熱心だったが、周りとの付き合いは、あまり上手ではなかった。どちらかと言えば、仲間を蹴落としてでも上を狙うタイプで、いつもギラギラした眼をしていた。
一方の俺はいつもそこそこの成績だった。ただし、客との関係はいつも気にしていた。購入いただいた商品に関するフォローや、予算内で納まる商品の選定、家族構成や年齢に応じた商品の紹介など、売り上げよりも、その後にある暮らしを見ていた。
売り上げを重視する菅。客目線の俺。入社して10年が経つ頃には、菅は俺を特別視するようになっていた。
睨みつけてくる菅をよそに、俺は新商品の性能や客との会話を楽しんでいた。
最初のコメントを投稿しよう!