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「そんなことしたって、売り上げは上がらないだろう!いい加減、目を覚ませ!いい年して、何を考えてるんだ!」
先日、ダイニングキッチンを購入した客の家から帰社した俺に怒声が飛んだ。他の職員は怯えながら、怒鳴られた俺に視線を向けた。俺は気にせず、自分のデスクに向かった。
「聞いているのか!島田!」
課長の菅は顔を真っ赤にして、更に怒鳴った。
怒りをエネルギーに働いているのだろう。売り上げを最重視してきた菅だ。俺の行動は理解しかねるはずだ。
「すいません。顧客から問い合わせがあったもので」
「そんなことはお前が行かなくてもいいだろう。それより、1つでも客に商品を売りつけろ!」
立ち上がって俺を指さし、そう言うと、菅は渋々椅子に腰を下ろした。
いつものことだ。そう分かっていても、俺の身体の中心部はキリキリと痛んだ。気にしないようにしても、相手が向かってくるのだ。こちらの意志とは無関係に。
ここにはもう、俺の居場所はないのかもしれない。そう思いながら、俺は定時になると、さっさと職場を後にした。
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