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 「この事実はお二人から、別々に伺いましたし、高校の事務所に勤めている方からも、証言を得ました。  つまり、貴方が仰るような関係は、お二人の間には決してありえないのですよ。  そうして、妹さんが仕事を辞めた理由は、婚約者が日本に戻って来たので、結婚をする為でした。決して、痴話喧嘩で別れたわけではないのです。  鐵本さんは、個人的事情から、教授を憎んでいます。そうして、そんな人の元で仕事をしていた妹さんにも、腹を立てていました。  そんな中、妹さんが再び、教授の元で働こうとしていると知り、怒りに火が点いた。  二人への復讐を考えている時、彼の存在を知り、良からぬ噂を流そうと、あの日、嘘八百な話を披露したわけです。  一つだけ申し上げれば、妹さんに千里眼の能力があったのは、嘘ではありません。  が、それは十歳頃までの話で、今は一切、失われているそうです」  言葉を切って、鐵本を見る。怒りに震えてはいるが、否定できぬ為に、ただ、睨みつけるしかないらしい。 「しかし、待てど暮らせど、一向に噂が広がる様子はない。残念ながら、彼は、醜聞を広めるような人間ではなかった」
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