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封を開けると、招待状が出てきた。
風流な香の匂いが漂う。
匂いに気付いたらしく、圭が顔を上げた。
「良い香りですね」
切れ長な釣り上がり気味の目が、今は穏やかだ。
学校帰りの為に学生服姿で、顎の線で切り揃えられた艷やかな黒髪は今、撫で付けてはいるが、それでも少女のような容姿は相変わらずであった。
麻上圭の、東洋的な美しさに比べ、長瀬隼人はその名に似合わず、西洋的な容姿を持っている。
赤い柔らかな髪と、べっ甲色の瞳。肌の色は東洋のものではあるが、彫りの深い顔立ちは、欧羅巴に存在することこそが相応しい。
ここ、長瀬萬請負、謂わるなんでも屋ではあるが、世間では探偵として認識されており、圭は助手として勤めている。
今は二人して、依頼に関係する資料を漁っている最中であった。
「招待状だよ。
あ、君宛のもある」
興味を示したらしい圭が、隼人の元に来た。
「招待状?」
「あぁ。以前、父さんの代わりに出た、秘密の会のね」
「秘密の会?」
圭の目に興味の光が灯った。
「そう。怪談や妖怪に遭遇した話を披露する会なんだ」
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