雨音が憎い

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「……悲しいね」  彼女は憐れむように声をかけてくれる。僕の過去は、他の人からすれば自殺するに足りないのかもしれない。でも僕からすれば、それは死ぬ理由足り得るのだ。 「僕が悲しいのは、彼女がグレてしまったからじゃ無いんです。姿形が変わっただけで恋心を捨てられるような、軟弱な恋だった事が、嫌なんです」 「……君が思ってるほど、愛って純情で出来てるものじゃないんだよ。でも君は、幼稚園児から大学生になるまで純情を貫いた。その事は忘れずに、次の恋に行きなよ」 「尚更です。10年近くの恋情が消えて、今の僕はもう、空っぽなんです」  雨音が強くなる。鏡を無くした時も、小雨じゃなくて大雨が降っていたら、遠足が無くなって僕達のグループがバラバラになる事も無かったかもしれない。そうすれば彼女がグレる事も無くて、恋情も継続できたかもしれない。  今は、この雨音が、心の底から憎い。 「話を聞いてくれてありがとうございます。貴方にとってはつまらない話だったかもしれませんが、決心がつきました」 「え……」  僕は震える足を殺して、もう1度柵に手を伸ばした。話しているうちに嫌というほど痛感させられた。僕は、死んだ方がいい。純情を貫く事も出来ずに、人の仲を壊した害虫。そんな評価が、僕にはお似合いだ。 「待って!
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