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ベッドの上で繋がったり離れたりを繰り返して、三時間が過ぎた。やり切った感満載で、二人は仰向けになって、息を整えていた。
「大丈夫? 体――痛い所ない?」
「ないよ。久しぶりだったから疲れてるけど」
「三か月ぶりだよな」
裕斗のパーマが緩くなった前髪を弄りながら、拓也がいう。
「そうだな」
もうそんなにしてなかったのか。その間に、誰かとしたいとは一度も考えなかった。
「――してないよな? 誰とも」
拓也が確認してくる。
「拓也は?」
「してないよ」
「じゃあ俺もしてない」
「何だよじゃあって。――したのか」
真顔になって拓也が追求してくる。お互い大した貞操観念を持ち合わせていないのに、やけに厳しい。
「してないって」
裕斗から脚同士を絡めて、軽くキスをする。するとすぐに、拓也の表情が柔らかくなった。
「好きだからな」
裕斗の肩を抱き寄せながら、拓也がはっきりといった。
「している時に言いたかったけど、聞き流されそうで」
「そうだね」
聞き流していた可能性は高い。行為中の「好きだ」「愛してる」「裕斗だけ」なんかは、基本信じないようにしている。
「遠慮しないでお前も言えよ」
拓也ならではの「好き」の催促に笑ってしまう。彼はプライドが高いのか。
「好きだよ」
口からすんなり出てくる。葛藤はなかった。どう考えてもさっきまで両想いエッチをしていたのだ。今更言葉を渋っても意味がない。
「もう一回いえよ」
「好きだ」
恥ずかしさはない。胸の閊え(つかえ)が取れたようなすっきり感がある。カタルシスだ。ずっと堰き止めていた想いをやっと口にできたから。
「俺も好きだ」
拓也が目を細めて笑う。本当に嬉しそうに。
軽く啄むキスをしてから、裕斗は違う話題を振る。
「なんであの時間に店に来たの。親族の会食があったんだろ」
「中止になったんだ。雷雨でガーデンパーティーなんてできないだろ」
「ガーデンパーティー」
「俺の兄が、婚約者を連れてくるってことで、実家で大掛かりな顔合わせをすることになってたんだ」
「へえ……」
やはり拓也の実家は、由緒正しい家柄のようだ。
「それより、さっきの岩みたいな奴は何だったんだ?」
急に拓也の声が厳しいものになる。
「専門のときの同級生だよ。俺に迫ってきてしつこいから何回か寝ただけ。すぐにあっちが退学したからずっと会ってなかったんだ。いきなり店に来て驚いた」
「そうか……俺が間に合って本当に良かったな。もう、こっちも使うなよ」
拓也が裕斗の性器を掴んでくる。ぎゅっと力を入れて。
「潰す気かよ」
笑いながら拓也の手を退けようとするが、石のように動かない。
「本気だから。俺以外と寝るなよ、もう二度と」
――もう二度と?
けっこう重い約束だと思うのだが。本当に本気だろうか。
「拓也もそうしてくれるなら」
「寝ないよ。誰とも」
いつもの柔和な笑みは消えていた。至って真面目な顔を寄せてくる。
唇同士が触れた。軽く表面を吸い合うだけで終わっても、裕斗の鼓動は跳ね上がったままだ。
――けっこう本気で、好きになってくれてるんだ。
どこをそんなに気に入ってくれたのだろう。学歴も、育ってきた環境も全く違う。拓也の研究の話なんて、説明されても一割だって理解できないのに。
「本当に――裕斗はモテるよな。見た目が良すぎるのも困る」
――見た目を相当気に入ってくれてる? だったら友斗だって。
「髪型、すごく似合ってる。ピアスも」
拓也が裕斗の前髪をくしゃくしゃに撫でた後、かき上げて、額にキスをしてくる。
裕斗の顔は一気に火照った。こんな些細な接触の方が恥ずかしい。セックスよりも。
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