プロローグ①

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プロローグ①

 ハーレクインに描かれるようなラブロマンスに堕ちてしまいたい。オトナの恋に焦がれて、溶けて、そして女として、雌として満たされてみたい。  そう願っていたのは、まだ幼かった中学生の頃だった。たくさんの不幸に見舞われて、彼女は故郷を捨て、自らの容姿に、名前に、過去に、別れを告げた。  そして遠く、ただただ人の多いだけの街にたどり着いた。  別人となって。生きるために。    彼女の名は須藤灯里。  この物語の登場人物の一人だ。  語り部は、彼女であったり、私であったり、あるいはまだ紹介していない彼かもしれない。  この物語はフィクションだ。想像の産物で、偶像の残物で、空想の回想で、創造の造像で、なにより執着の終着だ。  歪に織り成された物語に、どうか最後までお付き合いいただきたい。
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