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道端で歌っている女の子を見た
身を切り裂かれるような絶叫
彼女はきっと咲いているんだろうなと思った
自分はきっと咲いていないんだろうなと思った
心から淋しく、そう考えた。
役割をまっとうするのだ
自分にはそれしか無いのだ
立つべき瀬に立って、
叩くべき敵を叩いて、
そうやって証明する以外に自分の存在意義を示すことができないんだと思った
私は壊れてる
壊せる限り目の前のものを叩き壊して、
滅して、
殺して、
そうしてどこにも辿り着けない。
いつまでも満たされることがないから、
いつまでもいつまでも破壊し続ける
視界に映るすべてが粉になるまで、
塩になるまで破壊の限りを尽くす
RPGの魔王が思い浮かんだ
私はただ壊すだけの機械だ
それしか分からない欠陥品だ
壊せ。壊せ。壊せ。壊せ。
次第に暴力が楽しくなってくる。
底の底まで落ちていく自分が面白おかしくて、
滑稽で底辺で笑えるほどに最低で、
……まったく女の子らしくなくて。
自分の心を消し飛ばすように、
いやな気持をぜんぶ忘れられるように、
力の限り暴力を振るうのだ。
それしか分からない機械のふりをして、
滓のように遺った人間性さえ全否定するように、
誰に見られているわけでもないのに、
まるで誰かに査定されるオークション会場のような気分で、
破壊の限りを尽くすのだ。
それによって自分の存在が許されるような気がした。
そうでないと自分はそもそも存在さえできないような気がした。
狂ってる。狂ってる。
狂気だ。狂気だ。
私はとっくにいかれてる
ああ、誰か私の息の根を止めてくれないだろうか
この乾きを私自身の血で癒してくれないだろうか?
なんで私は生きてるの?
暗いよ
怖いよ
心苦しいよ。
ただただここに存在しているそれ自体が息苦しいよ
生きてることが苦しいよ
窒息しつづけている
ずっと窒息しつづけている
針金で喉を締められ、そのまま開放してもらえない感じ。
誰か息の根止めてほしい
もう誰でもいいから、私の息の根止めてほしい感じ。
こうやって悲鳴を歌い続ける小鳥になってる気がする
そういう悪循環で私の呪いは加速している気がする
ああ、どこまで壊れれば終わるんだろう
どこに結末があるんだろう
私の呪いは、感情は心は人間性は、
果たして何を求めてるんだろう?
何を壊せば救われるんだろう?
宿敵すらない人生は本当に億劫で、
苦痛で、
窒息しそうで。
だからこそ、
こうやって復讐の炎を燃やすことに歓びさえ感じる。
ああ、壊してしまいたい。
粉々に壊してしまいたい。
私の理性や感情ごとすべて、
粉微塵にて、
消し飛ばして、
熱で焦がして、
憎悪で溶かして、
敵意で酸化させて、
理不尽なくらいにひどいことにしたい。
目を覆うほど無残な惨状にしたい。
――――ああ、
私こそが怪物だ。
理性のない怪物だ。
私こそが殺されるべき悪だ。
脳が単純化されてしまった害悪だ。
右も左も分からなくなった老婆が、
凶器を手にしているのがきっと私だ。
どうしてここにいるんだろう
悲惨な気分になる
なんでまだ息してるんだろう。
誰か首を締めて息の根止めたほうがいいんじゃない?
でもまだ何かを求めているの
もうやめさせて。
黙らせて
何も望ませないで
何かを望みながら何も叶えられない日々は、
本当に本当に心が苦痛で、
何もかもをひっくり返したくなるから。
きっとこんなことを続けていたら本当にバケモノになるから。
ああ、誰か終わらせてほしい。
こんな破壊しかない日々を。
こんな情けなくてセンチメンタルな気分になる柊ゆかりを。
終わらせて。
殺して。
そうでないなら希望を与えて。
分からない。
ずっとずっと分からない。
孤独に病んで、心を砕いて、
私はずっとずっと何を求めているの?
どうしてこんなにも苦しいの?
きっと本当は子供でも分かる命題。
こんな簡単な問題がとけなくて、私は惑う。
痛む。
苦しむ狂う。
迷う。
暴力に逃げる。
ああ、何かを壊している時は救われる。
それによって何かが解決するならいっそうすっきりする。
それが正義だから。
なら、私の苦しみも正義だから。
ああ、嬉しいな、
こんなにも深くて苦しくて幼くて吐き気がするような、
言い知れない結論のない感情が、
堂々巡りが懊悩が、
正義を行使している間だけは正当化されるから。
許されるから。
生きてていいよ、って自己肯定感で満たされるから。
ねぇねぇ、
私、
生きてていいよね?
何かを壊し続けている限り、
生存権を許されるよね?
すっきりさっぱり、終わらせるから。
いつの日か訪れる断罪の日まで、
私は私を壊すかのように、
芸術的な破壊を演じ続けるから。
ダンボールの中で死んでく子猫のように、
そのダンボールの中でネズミのおもちゃを噛み続けるように、
柊ゆかりは何かを壊すから。
この世界を破損させ続けるから。
噛み跡を残し続けるから。
ねぇ、私の無様を笑ってほしい。
無様の結果を笑ってほしい。
でも、もしその噛み跡に何かほんの少しでも感じいることがあったのなら。
『よく出来たね』って、気まぐれに褒めてほしい。
それだけできっと私の人生は救われるから。
たった一言で、ぜんぶが許されるようになるから。
ぜんぶの苦労が、報われるから。
さあ、今日も一華咲かせよう
無残で苦しくてどうしようもなくて、
容赦なくて最悪で最低で無様で、
だけど破壊力だけは誰にも負けてない柊ゆかりの滅殺を。
ねぇ、誰か見ててくれるかな?
こんな矛盾だらけの私の終わりを。
絶望を。
絶叫を。
誰かに届け、日陰に咲く花。
たった一輪。
名前もない雑草の存在が、
誰かの目に留まる日を信じて。
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